家庭菜園で一番ガッカリするのはアブラムシの発生です。
単に吸汁するならまだしも、モザイク病などのウイルス性の病気を引き起こすのが我慢なりません。
それなりに家庭菜園の経験を重ね、アブラムシの基本的な予防方法 *1を徹底しても、相変わらずに奴はやってきます。
そこで、アブラムシの発生予防として、自然農薬で有名な唐辛子酢を導入する事にしました。
基本的な予防策*1:
風通しを良くする
日光に当てる
肥料をやり過ぎない
見つけ次第捕殺する
唐辛子酢とは何なのか?効果がある理由は?
そもそも唐辛子酢とはなんなのでしょうか?
本当に効果があり、安全なものなのでしょうか?
農薬を使うのは、費用的にも安全性の面でも出来るだけ避けたい。
それで自然農薬に惹かれたものの、よく分からないものを、安易に使うのもなんか嫌な気がします。
そこで唐辛子酢の導入の前に、自分なりに納得いくまで調べて見ました。
自然農薬/特定農薬とは何なのか?
まず自然農薬とはなんなのか?調べてみると、以下のように定義されていました。
主に身近な植物が持っている殺菌・消毒成分を利用した病害虫防除資材のこと。農薬取締法に規定された特定農薬(特定防除資材)である重曹、食酢、地場の天敵をはじめ、従来民間薬として使われてきたトウガラシ、ドクダミ、牛乳や、特定農薬からは外されたが、その広い効能からホームセンターなどで市販されている木酢液など、多くのものがある。
自然農薬|イミダス
自然農薬は、農薬として専用に作られた物ではなく、『身近な資材で作物の殺菌・消毒として使う物』 のようです。
その中でも唐辛子酢の材料の酢は、国が定めた特定農薬として規定されています。
一方で唐辛子も従来から使われてきたの民間薬ですが、特定農薬には規定されていません。
それでは特定農薬とはなんなのか?については、以下のように定義されていました。
特定農薬は、改正農薬取締法第2条第1項において「その原材料に照らし農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがないことが明らかなものとして農林水産大臣及び環境大臣が指定する農薬」
特定農薬|農林水産省
ようは自然農薬のなかでも、農薬取締法にて薬効と安全性を国が保証し、『農薬だけど登録は不要』とされたものが 特定農薬のようです。
それでは農薬取締法とはどのような内容なのか?については、以下に分かりやすくまとめられていました。
2002年(平成14年)には、全国各地で無登録農薬の販売・使用が、国民に対する健康への不安として社会問題となったことから、農薬使用者すべてに使用基準の遵守を明確に義務づけ、違反には重い罰則を設けました。たとえ登録のある農薬であっても、使用基準に違反した場合は、3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、場合によっては両方が科されることになりました。改正のきっかけとなった無登録農薬については、販売禁止に加え、製造、輸入、使用も禁止としました。他方、それまで防除目的で使われてきた農業資材が無登録農薬とならないよう、農薬登録制度の枠外で製造、販売、使用できる特定農薬(通称:特定防除資材)も創設されるといった3回目の大改正が行われました。
農薬取締法の目的と改正の歴史|JCPA農薬工業会
ようするに農薬取締法とは、『国民の健康の為に、登録されていない農薬の 販売・使用 を禁止する法律』であり、登録不要の例外として『これまで防除目的で使われてきた(自然農薬のような)農業資材を、登録不要の特定農薬として定めた』ようです。
こうなると、酢はよいが唐辛子はどうなの?となってしまいます。
調べてみると、国の農薬審議会でも唐辛子や牛乳などが防除資材として使われているのを認識しているが、対応しきれなくて、『常識的な範囲内での使用は規制対象にしない』事になっているようです。
「これは食品と思いますが、いかがでしょうか」というリストがどんどん出てくれば、「これは外してよろしいですね」という形で外していくのが一番の得策だと思っております。先ほど言われたトウガラシにつきましても、トウガラシをそのまま使いたいというパターンと、トウガラシの抽出液を使いたいというパターンと、トウガラシの何かを使いたいと、いろいろなパターンがあります。例えばトウガラシそのものを使うというのはいいじゃないかということであれば外せばいいですし、抽出したということになると、今度はある成分の濃度を高くするという可能性がありますので、そういうものについてはきちんとデータを示さない限りはだめですということになれば、これは特定農薬になり得るものだと思います。
農業資材審議会農薬分科会特定農薬小委員会及び 中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会第7回合同会合 議事録|環境省
なんか規制しながら詳細を曖昧にしていて無責任な気がしますが、現状では 食品 でもある唐辛子を自然農薬として使うのは、常識的な範囲内で自己責任で自家使用限定で使うのは問題なさそうです。
唐辛子酢にアブラムシの予防効果はあるの?
それでは唐辛子酢はどのような機序でアブラムシを予防するのでしょうか?
いろいろ調べて見ると、『唐辛子のカプサイシン等の辛味成分をアブラムシが嫌う事を利用し、唐辛子酢を作物に噴霧する事でアブラムシを寄せ付けなくする』と言う事のようです。
そこで、『アブラムシが唐辛子を忌諱する明確なエビデンスがないか?』調べてみたのですが、残念ながらハッキリしたエビデンスは見つける事はできませんでした。
ですがアブラムシではないものの、米びつの虫よけで有名な米唐番(唐辛子エキスが主成分)が実際に長年使われており、わが家でも使っていて効果があることから、まあ信じられなくもないかと。
信じる事にしました。
なお、唐辛子酢の狙いはあくまでアブラムシの寄生を防ぐ忌諱効果(寄生予防)であり、『アブラムシの殺虫効果はない 』ようです。
アブラムシが発生してしまった場合は、テープを使ってアブラムシを取ったり、別な農薬や自然農薬で駆除する必要があります。
酢の役割
唐辛子酢の酢に関しては、唐辛子の辛味成分を抽出するのが役割で、アブラムシに対する直接的な何らかの効果が期待されているものではないようです。
ただし酢に含まれる酢酸に強い殺菌・抗菌作用があります。
また、悪天候での生育不良や、肥料のやり過ぎによる窒素過多で植物が徒長化し、病気に対する抵抗力が低下した時に、酢酸は窒素がアミノ酸の合成に使われ窒素過多を解消するのに役立ち、徒長化を止める(活力剤となる)作用もあるようです。
植物が軟弱徒長になるとアブラムシに寄生されやすいと言われますので、酢が植物が丈夫に成長するのを助けることも、アブラムシの予防に効果があるように個人的には思います。
なお酢が特定農薬と認められた理由は、この殺菌・抗菌・徒長化防止による薬効でうどんこ病等への効果が明確な為のようです。
唐辛子焼酎よりも唐辛子酢を選んだ理由
唐辛子を使う自然農薬には、唐辛子酢と唐辛子焼酎が有名です。
焼酎は現在は特定農薬になってはいませんが、特定農薬としての効果・安全性は確認されており、ただ焼酎業界が特定農薬とされることでのイメージダウンを懸念し、指定が見送られた状態にあるようです。
ただし、焼酎は安全性に問題がないので特定農薬にしても良しとはなっているが、期待される病害虫駆除の効果はあまり期待できないようでした。
この為、アブラムシ予防とうどんこ病予防の両方狙いで、唐辛子酢を導入する事にしました。
実は、うどんこ病対策に自分でも食酢を実際に使った経験があり、風通しの改善との併用でしたが、うどんこ病の改善効果を確認しています。
唐辛子酢を作る
材料
100均で購入した唐辛子


ダイソーで購入。¥110で20g入っていました。
500mlの原液をつくるのにピッタリの量です。
中国産の唐辛子です。
スーパーで購入した穀物酢


ヨークのPB品で、¥106で500mlです。
原材料は『輸入米』『アルコール』『酒粕』とのこと。
あわせて¥200円 程度。これだけで1年間は余裕で間に合います。
これくらいの出費でアブラムシのリスクが減るならば上等です。
作り方
- 唐辛子ひと掴み(20g)をハサミで細かく刻む。
5mm幅くらいで刻みました。 - 刻んだ唐辛子を、タネごとペットボトル等の密閉容器に入れ、約500mlの酢を注ぐ。
刻んだ唐辛子が漏斗に詰まる時は箸で押込みます。 - 2ヶ月ほど冷暗所で放置する。
- ガーゼで唐辛子をこし取り、再び容器に入れて原液の完成です。
このまま密閉保管します。
2か月たった唐辛子酢は、ろ過した原液状態でもそれほど嫌な刺激臭はなく、キャップをして下足棚に保管しても全く匂いは気になりません。
唐辛子酢の使い方
希釈しスプレーでの噴霧
希釈の割合
通常の使用時には、作った唐辛子酢の原液を水で500倍に薄めて野菜にスプレーします。
水500ml に対し、唐辛子酢は 原液 1ml になります。
かなり薄く希釈されますが、スプレーすると仄かに酢と唐辛子エキスが感じられます。
ただし5~6月や9~10月などのアブラムシの活動が活発になる時期には、水で薄める割合を250倍に濃くします。
水500ml に対し、唐辛子酢は原液2mlです。
噴霧する場所
葉の表裏にまんべんなく噴霧します。
とくにアブラムシは光が弱まる葉の裏側を好むので、葉の裏側に重点的に噴霧します。
わたしは、イチゴ や ジャガイモ などには目合い1mmの防虫ネットを掛けていますが、アブラムシは目合い1mmの防虫ネットでは完全には防げないので、これにも防虫ネットを外してしっかり噴霧します。
使用頻度
いくら自然農薬といっても使い過ぎは良くなく、週に1回程度スプレーで薄く噴霧するのが良いようです。
これは葉の表面の油きれを避ける為です。
水やりの時に『出来るだけ葉に水を掛けないように』とされるのもこの為で、葉に水遣りすると葉の表面の油分が切れてしまって害虫を呼び寄せる事になるからのようです。
唐辛子酢をスプレーする事も、やり過ぎると葉の表面の油分を切らしてしまう事になります。
わが家のプランター菜園(ジャガイモ6鉢、ミニトマト1鉢、ズッキーニ2鉢、パプリカ1株、イチゴ4株)では、全部のプランターに噴霧すると、希釈後の唐辛子酢を毎回1000ml程度使います。

展着剤について
植物の葉の表面の油分により水成分の散布液は葉に付着し難い為、展着剤と言うものが使われます。
唐辛子酢の場合も、葉への付着を良くする為に、少量の純石鹸や黒砂糖を展着剤の代用として極少量混ぜる方法があるようです。
純石鹸も黒砂糖も特定農薬ではないので自己責任になりますが、水で希釈した唐辛子酢500mlにつき、純石鹸を2ml程度もしくは黒砂糖を2mg程度を加えて溶かすと葉に付着しやすくなり、効果の持続が期待できるようです。
石鹸を使う場合は、合成洗剤ではなく無添加の純石鹸を使いましょう。
なぜなら純石鹸は植物由来のため構造が単純で生分解されやすいく、植物へのダメージが少ないためです。
対して合成洗剤は主に石油由来で構造が複雑で分解されにくく、さらに着色剤・香料・安定剤などの添加剤を含む場合も多く、植物へのダメージが懸念されます。

なお、特定防除資材の殺虫殺菌剤として市販されているやさお酢の成分に甘味料や乳化剤が含まれていて、なんでだろう?と思っていたのですが、これらも展着剤の代用なのかもしれません。

それでもアブラムシが発生してしまったら
唐辛子酢はアブラムシが寄付き難くする予防薬であり、それでもアブラムシが大量発生してしまったら唐辛子酢では間に合いません。
アブラムシの殺虫効果のある自然農薬(コーヒー石鹸水が良いと思います)や、市販農薬で対応しましょう。
これらは唐辛子酢のような忌避剤ではなく、粘性の液を噴霧する事で物理的にアブラムシを窒息させて駆除します。

まとめ
唐辛子酢は、自作すればとても安価で使えます。
わたしはたったの200円で原液を500mlつくり、冷暗所で保管し2年は使っています。
実際のところ、アブラムシは風に乗って漂ってくる(もしかしたらアリが連れてくる?)ので、週に1回かかさずに唐辛子酢を散布しても、植物につくアブラムシをゼロにすることはできません。
でも酢と唐辛子の匂いが、特にズッキーニなどの独特な青臭い匂いを紛らすようで、植物の匂いで害虫を誘引することはなくなる気がします。
結局のところ、アブラムシの防除には唐辛子酢だけでは足りず、防虫ネット・アリ駆除・ウイルス病耐性品種の選択・日々の管理と駆除などが必要になります。
ですがなんといっても安価で、酢の効果で植物が元気に育ちウドンコ病になり難くもなるので、コストを下げて家庭菜園を楽しむには最適と考えます。